サラリーマンは公的年金として「国民年金」と「厚生年金」に加入しています。
え、何それ?
そんなかたは、まずこちらをご覧になってから読み進めてください。基本的なことから順に解説していますので誰でも理解できます。
振り返りの意味も込めて、サラリーマンのあなたが覚えておくべき豆知識を2つ。
- 給与明細の「厚生年金保険料」には「国民年金」も含まれている
- 保険料の半分は勤務先が、半分は自分が負担している
どちらにも加入していますのでご安心を。
ただ、こんな疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
強制加入なんだから、どんなメリットを提示してくれるわけ?
今回は、サラリーマンのあなたが享受できる「老齢基礎年金・老齢厚生年金」「障害基礎年金・障害厚生年金」「遺族基礎年金・遺族厚生年金」について、簡単に解説していきます。
ちなみに、”基礎”とついているものが「国民年金」に関係し、”厚生”とついているものが「厚生年金」に関係しています。
これらを把握することで、最終的には現在加入している民間の保険を見直すきっかけとなれば幸いです。最後の「まとめ」の章で大事なことをお伝えしていますので、内容にざっと目を通して理解を進めながらぜひ最後までご覧ください。
ちなみに私は保険を悪者扱いするつもりはありません。保険はむしろ、予期せぬ事態に遭遇した人やその家族を支える「相互扶助」の考えに基づいており、良い仕組みであるという前提で考えています。
ただし、不要または過剰である保険についてはしっかり見直していきましょうということです。
老齢基礎年金
老齢基礎年金の受給額は、「物価スライド方式」であり、物価の変動に応じて毎年見直されます。
老齢厚生年金
老齢基礎年金の受給額は「物価スライド方式」でしたが、老齢厚生年金は払った分だけもらえます。
障害基礎年金
それぞれ等級は
- 等級1級:他人の介助を受けないと自分のことがほとんどできない
- 等級2級:必ずしも他人の助けを必要としないが日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない
と定義されており、障害の程度は「障害認定基準」で部位や機能ごとに詳しく区分されています。
障害厚生年金
障害厚生年金は、もらえる条件(障害要件)が等級3級まで適用となります。
- 等級3級:労働をするうえで著しい制限を受けるか、または著しい制限を加えなければ労働ができない
等級3級に該当する方は、最低でも48,858円/月(2020年度)が保証されます。この金額を民間保険を考える際の目安としても良いでしょう。
障害手当金
こちらは障害厚生年金の等級3級よりやや程度の軽い障害が残り、治ったときに支給される一時金です。
最低でも1,170,200円/月(2019年度)が一時金として支給されます。
ただし、次に説明する「傷病手当金」と同時に受け取ろうとした場合には支給調整が入る為、「傷病手当金」の支給が終了したあとに「障害手当金」を請求するのが良いでしょう。「傷病手当金」は次に説明しますが、最長で1年6か月支給されます。「障害手当金」は初診日から5年以内で治ったときに申請するので、「傷病手当金」の最長支給期間である1年6か月後でも申請可能です。名称がなんとも紛らわしいですね。
ちなみに、自営業者など第1号被保険者の場合、障害手当金はもらえません。
(参考)傷病手当金
こちらは障害年金ではなく健康保険での保障ですが、障害年金と合わせて覚えてほしい保障です。
障害年金の等級に該当しなくても、急に収入が0になることはありません。
また、支給タイミングが「障害厚生年金」と被る場合、支給調整が入ります。「傷病手当金」と「障害厚生年金」を合わせた総額を受け取れるわけではないのでご注意ください。
ちなみに、自営業者など第1号被保険者の場合、傷病手当金はもらえません。
(参考)高額療養費制度
こちらも障害年金ではなく健康保険での保障ですが、障害年金と合わせて覚えてほしい制度です。ひとつ前に説明した「傷病手当金」と、この「高額療養費制度」は民間保険に入る前に必ず把握しておきたいものです。
高額療養費制度とは、同一月のかかった医療費の自己負担分が高額になった場合、一定の金額を超えた分は払わなくても良い、または払い戻される、という制度です。
ほとんどの人が該当する前提で考えてみましょう。
- 69歳以下
- 年収約370万円~約770万円
この場合、ひと月の上限額は
- 80,100円+(医療費 – 267,000円)× 1%
です。医療費の場所に実際に金額を入れてみましょう。
- 80,100円+(500,000円 – 267,000円)× 1% = 82,430円
- 80,100円+(1,000,000円 – 267,000円)× 1% = 87,430円
- 80,100円+(3,000,000円 – 267,000円)× 1% =107,430円
医療費が300万円かかったとしても、実際の支払いは約10万円ほど。補足として、この金額を算出するうえで、家族が加入している公的医療保険制度が同じ場合は世帯で合算もできます。
医療費300万円が1年続いても100万円ほど。まずは100万円貯金を貯めておくことができれば、この危機的状況を民間保険に頼らず、公的保険で乗り切れる武器をもったといえるでしょう。
ただし注意点として
- 入院時の食事、差額ベッド代、先進医療、自由診療などは対象外
です。2020年3月1日現在で、先進医療は89種類。主なものは、重量子線治療(1,558件)や陽子線治療(2,319件)などです。
ここからは数字が出てくるわ。私は目をつぶっておくわ。
数字が嫌いな方は読み飛ばして頂いても構いませんが、ここは感情を抜きにして数字だけで見ていきます。さきほどの括弧内の件数は2017年度1年間での件数です(出典:厚生労働省・先進医療会議「平成29年度実績報告(平成28年7月1日~平成29年6月30日)」)。少しタイミングがずれますが、2018年1月1日時点で日本人の総人口は1億2,520万9,603人だったので、2017年度に日本人のなかで重量子線治療と陽子線治療を受けた人の割合は
- (1,558 + 2,319)/125,209,603 ×100= 0.003
割合は0.003%。このうち20代~30代が含まれる確率はもっと小さいはずです。これらの数字に初めて感情をのせて、民間保険に入るか否かという判断をしなくてはいけません。要はどこまで不安視するかということです。
参考の割には少し話が長くなってしまいましたが、それだけこの「高額療養費制度」というものを良くも悪くも知ってほしいということです。民間保険に入る前に絶対に把握しておいてほしいです。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、子どもがいない場合は受け取ることができません。注意点として、子どもがいる人であっても、子どもが18歳に到達する年度の3月31日を境に受給資格がなくなります。
その救済措置として、「中高齢寡婦加算」があります。遺族年金の給付が停止されてから65歳になるまでのあいだ、48,856円/月(2020年度)が給付されます。ただし、子どもが18歳に到達する年度の3月31日時点で、40歳未満である場合は、40歳になるまで給付されません。若ければ若いほど、再婚できる可能性が高いという国側の判断なのでしょうか。
遺族厚生年金
ちなみに、亡くなった夫が自営業者など第1号被保険者の場合、遺族厚生年金はもらえません。そもそも厚生年金に加入していないのだから当たり前ですね。
また、遺族厚生年金は一生涯に渡ってもらえます。 例外として、30歳未満で子どもがいない妻は、5年間のみ給付されます。遺族基礎年金のところでも同じことを書いていますが、若ければ若いほど、自分で働くこともできるし、働く意思がなくても再婚して養ってもらえる可能性が高いという国側の判断なのでしょうか。若妻は注意!ということでもありますし、若妻には未来がある!とも受け取れます。
さいごに(※重要)
「○○基礎年金」の部分は、2020年度時点での金額を提示しました。「〇〇厚生年金」の部分は、給与や年齢によって様々である為、具体的金額は提示しませんでした。こちらはFP(ファイナンシャルプランナー)の方などに相談してみると良いかもしれません。
特に、夫が亡くなったときの「遺族基礎年金・遺族厚生年金」、夫が働けなくなったときの「障害基礎年金・障害厚生年金」は、民間保険に検討するうえで知っておく必要があります。
国民皆保険と謳われる日本に住む私たちは、民間保険に入る前にすでに多くの公的保険料を徴収されています。起こりうるリスクの大部分を公的保険で賄えていることを理解し、民間保険料の払い過ぎを避けましょう。保険貧乏には絶対にならないように。
一番コスパの良い民間保険の入り方は、公的保険を理解したうえで「必要最低限の保険」+「貯金」でリスクに備えること。起こりうるリスクに対して、「貯金」で対応できることが一番良いのです。運よくリスクを免れたなら、その「貯金」は他のリスクに充当することもできますし、自由に使うこともできます。
必要以上に民間保険に入ってしまったら、それは亡くなる・働けなくなるというリスクにしか使えません。そのお金はロックされてしまいます。
まずは100万円くらいの「貯金」を確保するまで浪費を我慢しましょう。100万円貯まったら、民間保険を見直して必要以上に加入しているものは解約しましょう。その浮いたお金はできれば豪華な食事に充てるのではなく、資産運用に回しましょう。100万円が貯まり民間保険の呪縛が解けたその日から、あなたの家計事情は好転するといっても過言ではありません。まずは100万円を目標に日々を暮らしていきましょう。そこから始まります!
おまけ
先ほど「まとめ」の部分で『FP(ファイナンシャルプランナー)の方などに相談してみると良いかもしれません』と書きましたが、実際にどんな風に聞いてみれば良いかの例を書いておきます。 例えば…
前提条件として、28歳夫、28歳妻、2歳子、来年もう一人産まれる とした場合
- 29歳で自分が死んだとき、残された妻の遺族年金は?
- 39歳で自分が死んだとき、残された妻の遺族年金は?
- 49歳で自分が死んだとき、残された妻の遺族年金は?
- 29歳で自分が等級3級の障害を負ったとき、障害年金は?
- 39歳で自分が等級3級の障害を負ったとき、障害年金は?
- 49歳で自分が等級3級の障害を負ったとき、障害年金は?
これらを聞いてみて、比較しながら理解を深めましょう。ちなみに「自分が」のところを「妻が」に置き換えたパターンも合わせて聞いておくとよいでしょう。
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