前回は「給与明細」の内訳の一つである「控除明細」のなかの『所得税』について解説しました。
実は今回の『住民税』を理解したい場合、まず最初に『所得税』を理解したほうが早いのです。
理由は2つ。
- 『所得税』の計算方法と『住民税』の計算方法が似ているから
- 『所得税』に比べて『住民税』のほうが理解が難しいから
まだご覧になっていない方は最初にチェックしてみて下さい。
所得税編をチェックしたあなたはもう大丈夫。安心して今回の住民税編に進みましょう。
まずは給与明細を見てみる
まずは、給与明細をのぞいてみましょう。
【支給明細】
- 支払基準賃金
- 職位手当
- 家族手当
- 残業手当
- 休日出勤手当
- 通勤費
- 持株手当
- ・・・
【控除明細】
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
- 食事代
- 組合費
- ・・・
今回は控除明細のなかの『住民税』を解説するよ
納付時期から『住民税』を考えてみる
前回解説した『所得税』は、「その年」の所得をもとに計算した税額を「その年」に納付するのに対して、『住民税』は「前年の1月から12月まで」の所得をもとに計算した税額を「その年の6月から翌年の5月まで」納付します。
例えば、2018年1月1日から2018年12月31日の所得をもとに計算した税額を、2019年6月から2019年5月まで納付します。
なぜ、『住民税』の納付は1月から12月の年単位ではなく、6月から5月と時期がずれているのでしょうか。その違いを紐解くヒントは「管轄場所が違うこと」にあり。『所得税』は国税であり税務署が管轄。対して『住民税』は地方税であり地方自治体に納めます。
『所得税』と『住民税』の主要な計算方法は似ているので、まずは国が『所得税』を決めるために納税者の情報を集め、その情報を地方自治体に共有することにより地方自治体が『住民税』を決めています。
『所得税』の納付期限は、確定申告の提出期限と同じ3月15日であるため、情報を共有し処理する時間を含めると大体6月までに『住民税』が決まるということです。
そのため、『所得税』は毎月ざっくり計算で納付され、その年の年末調整で本来納めるべき『所得税』とのズレを確かめていたのに対し、『住民税』は確定した『所得税』の情報をもとに計算されているので、本来納めるべき額をその月にしっかり納めているということになります。
『住民税』=「所得割」+「均等割」
サラリーマンの住民税は次の式から求めることができます。
『住民税』
=「所得割」+「均等割」
「所得割」を求めよ!
一つ目の項の「所得割」の算出式は『所得税』の算出式と項目だけ見たらほぼ同じなのです。この記事の一番はじめに貼った『所得税』に関するリンクを見て頂いたあなたは、以下の式に見覚えがあると思います。
「所得割」
={『支給額(年収)』-『給与所得控除』-『各種所得控除』}×『住民税率』
-『税額控除』
『所得税』と比較しながら一つずつ見ていきましょう。
●『給与所得控除』
こちらは『所得税』と一緒。支給額(年収)に応じて使えるサラリーマン版経費(みなし経費)のことです。
●『各種所得控除』
それぞれの控除については、記事の最後に外部参考リンクを貼っておきますのでご確認ください。『所得税』の所得控除にもあった14種類のうち、13種類はそのまま。1種類「寄付金控除」のみ所得控除か税額控除かを選ぶことができる場合があります。
また、 所得控除額については『住民税』と『所得税』とで、同じものと異なるものとが混在しています。
所得控除額が『住民税』=『所得税』のもの
- 「雑損控除」
- 「医療費控除」
- 「社会保険料控除」
- 「小規模企業共済等掛金控除」
所得控除額が『住民税』<『所得税』のもの
- その他すべての控除
つまり基本的には、所得控除が少ない『住民税』のほうが『所得税』より割高になるということ。あなたの給与明細を見て頂くと、イレギュラーな所得がない限り『住民税』のほうが『所得税』よりも高いのではないでしょうか。
●『住民税率』
『所得税率』は課税所得が高くなればそれに応じて税率も5%から45%の範囲で高くなる “超過累進課税” でした。
それに対して『住民税率』は一律10%。この中身は「市町村民税」一律6%で「都道府県民税」一律4%です。
(一部例外な地域を除いて)
『住民税率(10%)』
=「市町村民税(6%)」+「都道府県民税(4%)」
(一部例外な地域を除いて)
●『税額控除』
代表的な税額控除を列挙しておきます。
- 調整控除…今回はこちらだけ説明
- 配当控除
- 住宅借入金等特別税額控除
- 寄附金税額控除
- 配当割額控除・株式等譲渡所得割額控除
「調整控除」とは…
ここは少しややこしいくせに金額的には大きくないので、流し読み程度で大丈夫。
『課税所得』をA、「人的控除」の差額をBとすると…ん?「人的控除」ってなんだ?
ここで「人的控除」と対比される「物的控除」から説明すると
「物的控除」
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
「人的控除」
- 「物的控除」以外の控除
ex.基礎控除や配偶者控除など
「人的控除」の差額というのは『住民税』の人的控除額と『所得税』の人的控除額との差のこと。
上記『各種所得控除』の説明のなかで
所得控除額が『住民税』<『所得税』のもの
という表現がありました。このうち、人的控除のみの差のことです。
それではもう一度。『課税所得』をA、「人的控除」の差額をBとすると
■課税所得(A)の金額が200万円以下のときは
⇒ AとBのいずれか小さい金額の5%=「調整控除」
■課税所得(A)の金額が200万円を超えるときは
B -( A - 200万円)=C
※Cの計算結果が5万円未満のときは一律5万円
⇒ C×5%=「調整控除」
「人的控除」と「物的控除」の部分は覚えておいて損はないです。
「均等割」を求めよ!
もう一度、復習です。
『住民税』
=「所得割」+「均等割」
先ほどまでは「所得割」を求めてきましたが、今度は「均等割」を求めていきます。
「所得割」が、所得税と同じく、納税義務者の所得によって決まるものだったのに対し、
「均等割」は、は全ての納税義務者から均等に税金を徴収するものです。
この「均等割」はほぼ全ての自治体が、市町村3,500円、都道府県1,500円を採用しています。
メモ: 実は均等割は都道府県1000円、市町村3000円が基本ですが、東日本大震災の復興特別税がそれぞれ500円ずつ加わった結果、上記の金額となっています(2014年度から2023年度までの10年間適用)。
さいごに
さいごに今までの式をまとめておきましょう。
『住民税』
=「所得割」+「均等割」
={『支給額(年収)』-『給与所得控除』-『各種所得控除』}×『住民税率(大体10%)』
-『税額控除』
+「均等割(大体5000円)」
冒頭でもお話ししましたが、『住民税』を理解したいなら最初に『所得税』を理解するべし。
こんかいの記事を読めば、マネーリテラシーがグンッと上がったこと間違いなし。『所得税』と『住民税』については誰に聞かれても大丈夫です。
▼『所得税』と『住民税』を読んだ勢いそのままに『厚生年金保険料』も学んでしまいましょう!
▼参考外部リンク
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